【書評】舟を編む

2014年5月6日火曜日

書評

t f B! P L

宮崎あおいさんと松田龍平さんで映画化もされた原作。辞書を作ることに情熱を燃やす人々と、恋を描いた作品。


三浦しをんさんと言えば、まほろ駅前多田便利軒を思い浮かべるのですが、本作もまほろ同様とても人間描写が上手で思わず引き込まれてしまいます。




ストーリー

松本先生と荒木編集者は新しい辞書『大渡海』(だいとかい)を作ろうとしていた。
しかし、荒木編集者は、定年退職間近。
そこで荒木編集者は、自分の後継となる人物を探していた。

松本先生は、荒木編集者に言う。

「辞書の編集作業は、ほかの単行本や雑誌とはちがう。大変特殊な世界です。気長で、細かい作業を厭わず言葉に耽溺し、しかし溺れきらず広い視野をも併せ持つ若者が、いまの時代にはたしているでしょうか。」
「必ずいるはずです。弊社の社員、五百余名のなかに見当たらなければ、他社から引き抜いてでも連れてきます。先生、どうか玄武書房に、ひきつづき先生のお力をお貸しください」
松本先生はうなずき、静かに言った。
「荒木君と辞書を作れて、本当によかった。きみがどんなにがんばって探してくれても、きみのような編集者とは、きっともう二度と出会えないでしょう」


荒木編集者は、嬉しさで嗚咽を噛み殺しつつ新しい編集者を探す。
荒木編集者と共に辞書編集部で働いていたチャラい西岡が同期で辞書編集に向く変人がいると紹介する。
彼は人とまともに話すことも出来ない変人で言葉に異様な執着を持っていると言う。
荒木は何故今まで黙っていたのかと西岡に憤りつつ彼が所属する営業部へ急ぐ。

そこで出会ったのが馬締(まじめ)と言う男だった。

馬締は、人とうまくコミュニケーションがとれないものの、几帳面で言葉に対する執着が人並み外れていた。

荒木は用件を告げようとして、言葉を途切れさせた。
部屋の隅にいる男に視線が吸い寄せられる。
荒木に背を向ける形で、男は壁際の棚のまえに立っていた。痩せて背が高く、営業部員としていかがなものかと思われるほど、髪の毛がぱさついている。
背広の上着を脱ぎ、ワイシャツの袖をまくって、棚の備品を整理しているところらしい。
備品の入った大小さまざまな箱を、あちらの段からこちらの段へと入れ替え、男は棚の中身を隙間なくきれいに整えた。
複雑なジグソーパズルのピースをまたたくまにはめこむような、見事な手際だった。
おお・・・・・・喜びのうなり声を、荒木はすんでのところで飲みくだした。
あれこそは、辞書づくりにおいて求められる、重要な才能のひとつではないか!



荒木は早速社内を根回しし、馬締を辞書編集部に引き入れる。

馬締は戸惑いながらも辞書作りにかける人々の熱意に動かされていく。

そんな中、馬締は下宿先の大家さんの孫娘、香具矢に出会う。

脇役がとても魅力的

主人公である馬締、香具矢もとても魅力的に描かれているのですが、脇役であるはずの同僚のチャラい西岡さん、西岡さんが編集部を辞めてから15年経ってやっと入ってくる新人編集者、岸辺さんがとても魅力いっぱいで西岡さんに至っては、辞めてなを重要人物であり泣かせます。

チャラく生きている人間は、外から見ただけではわからない悩みや葛藤をたくさん抱えて生きている。
そんな姿になんだか心うたれます。

最後に

まだ、映画を見ていないのですが、映画もとても気になります。

西岡さん役がオダギリジョーさんと言う事でチャラさをどう表現しているのでしょう。


大きな事件や、奇想天外なストーリーを使わずにここまで人を引き込める作品を書けるってほんとにすごいです。

以上です。



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