秀作と駄作のギリギリの境界線はどこにあるのか、これは良い映画なのかそれとも退屈な映画なのか。
見終わった瞬間に感じるのは、えっ!おしまい?であり、そのあとじわじわと愛おしさと悲しさがこみ上げて、あそこで終わりでよかったんだ、と思う。
そんな映画です。
ストーリー
舞台は、80年代と思われる新宿からはじまる。懐かしいちっともオシャレじゃない広告やアイドルが踊る新宿。そこに長崎から上京した横道世之介(高良健吾さん)が降り立つ。
図々しいながら友達に頼まれると断れないお人好し。
大学で知り合った図々しい友人のススメで何故かサンバサークルに入ることになる。
一緒にサンバサークルに入った友人倉持と、のちに友人の奥さんとなる唯。
突然、現在のシーンになる。
倉持の娘は中学生で、まだ学生も卒業していない男性と一緒に住む予定だと言う。倉持は大激怒とし男性のアルバイト先に乗り込む。
母親となった唯と倉持は夜のリビングで娘の話を話しあう。
真剣な話しあいの最中に、突然笑い出す。
そういえば、と話しの話題にあがったのは横道世之介のことだった。
世之介が図々しいしく話しかけた大学の同級生加藤(綾野剛さん)に誘われて行った教習所で、加藤の事が好きな女性に誘われてダブルデートする事になる。
その女性の友人が、与謝野祥子(吉高由里子さん)だった。
祥子は、世之介の事が好きになり強引なほどに世之介につきまとう。
長崎の世之介の実家にも一緒に行き世之介の母親とも仲良くなる祥子。
加藤の現在のマンション。
そのベランダで突然笑い出す加藤。
そういえば、横道世之介ってやつがいてさ、と話し始める。
祥子の現在、車の後部座席から外を見るとあの頃の祥子と世之介が歩いている(記事最初の写真)。
そういえばそんなやつがいたね、と言ったあと笑い出す。
そんな存在だった、横道世之介の物語。
原作は吉田修一
原作は吉田修一さんの本です。吉田修一さんと言えば、最後の息子、パレード、パークライフなど、なんでもないけどちょっと変な人間の心理や行動がとても上手に作品として描かれる作家さんです。
ギリギリ秀作、ギリギリ駄作の境界線
アクションやミステリーのように、驚くようなアクシデントや展開があるわけではない作品の場合、それがどれほど崇高な物事を伝えようとしていたとしても、見ている側は飽きてしまう。それでも堪えて見続けた結果、なんだこれ?という作品と、いやぁ良かった!となる作品は紙一重ではないかと思います。
本作は、ギリギリのところを見事に突き進み最後には見た人の気持ちをほんわかさせながらちょっと物悲しい気持ちにさせてくれます。
絶妙なバランスが見事です。
人は生きている。そんな当たり前の事を改めて考えさせてくれる作品じゃないかと思います。
以上です。