はじめに
ニュースによれば、また日本人の女性の平均寿命が世界一に返り咲いたとか。日本人女性、長寿世界一に返り咲き 男性の平均寿命は過去最高に - MSN産経ニュース
多くの方が80歳を超えても生きている現代。
いかにして60歳までの会社員人生を終えるか、よりも下手をするとそこからが新たな人生のはじまりのようになってきました。
本書の中でも、『僕がまだ若かった70歳のころ』と言うくだりがあります。
確かに100歳から見た70歳は若い。
40歳からみた10歳ですからね。
なんか不思議。
そんな時代に、100歳になってもサラリーマンとして働き続けている福井福太郎さんの人生をインタビューを通して、本と言う形にした本。
とても、ゆっくりと暖かな気持ちになる本です。
無名の人の人生にこそ歴史がある
本書の冒頭で、福井福太郎さんの本を書こうと思った経緯をこのように語っています。
しかし、福太郎さんのように普通の、無名の人の人生にこそ歴史があるものです。
地方出身の4人の無名の少年たちが経験した激動の人生を鮮やかに描いた一
クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国(上・下)_(集英社刊)を著した故・若桑みどり氏は、同著のあとがきでこのように書いています。
「時代の流れを握った者だけが歴史を作るのではない。権力を握った者だけが偉大なのではない。(中略)もし無名の無数の人びとがみなヒーローでなかったら、歴史をたどることになんの意味があるだろうか。なぜならわたしたちの多くはその無名のひとりなのだから」
福井福太郎さんは時代の流れを握ったわけでも、権力を握ったわけでもありませんが、歴史を動かす巨大なカに翻弄されながらも、100年という歴史を着実に刻んできた主人公です。
無名だけれども、周りの人にとってはかけがえのない「ヒーロー」の人なのです。
ご本人がおっしゃっているように、もう少ししたら、100歳でサラリーマンをしている、と言うのは普通な事になるのかもしれません。
それでも、現在、100歳でサラリーマンをしていると言うのは、それだけで偉人ですよね。
普通の事でも長く続ければ、偉業になる。
他を活かす
福太郎さんが「利他」を言うのは、決して、相手に嫌われたくない、仲間はずれにされたくないからといった後ろ向きの理由ではありません。
そうではなく、自分が何かをしようと思った時に最初に相手のことを考え、自分から何を与えられるか考えておく。
そうすれば、きっと相手も自分も満足するはずそんな感じなのです。
そこには自己の抑制はありません。
「利他主義」という言葉を生んだ18世紀の思想家オーギユスト・コントがいったような、自己犠牲の精神ともちょっと違います。
そこで、さらに福太郎さんに詳しく聞いているうちに、福太郎さんを支える利他主義のルーツは、18世紀末から19世紀のフランスで活躍した、ほとんど無名の経済学者の思想なのだと教えてくれました。
その名は、シモンド・ド・シスモンデイ。
福井福太郎さんは、大学で経済学を学び銀行へ就職しようとするも、家庭的な背景から落とされ、大学の助手になるものの一年で兵隊として招集され戦争が終わったときには、33歳になっていた、と言う経歴の持ち主です。
経済学を学んでいたときに出会った『シモンド・ド・シスモンデイ』。
その人もまた、あまり有名ではないものの、資本主義が横行していた19世紀のフランスで、誰もが人を蹴落としても自己の利益のために生きている世の中で、本当に必要なのは、他を活かす事で自分も生きる事なのだ、と言う思想を唱えたそうです。
本書の中でも何度も出てくるのですが、福井福太郎さんがなぜ100歳までサラリーマンでいられたのか?
時代や健康もそうですが、何よりも100歳になっても一緒に働いて欲しいとまわりの方がたに思ってもらえたから。
エクセルができる20代前半の人、でもなく、経理のプロの40代の人、でもなく、福井福太郎さんと働きたい、そう思ってもらえたからこそ、100歳になってもなをサラリーマンでいられるのですね。
ですから、96歳ぐらいの時に、いい加減にもう歳を取りすぎたから、会社を辞めようと思ったこともあるんです。
でも退職を申し出たら、親友の未亡人である今の会社のオーナーが
「ずっといてほしい。福井さんが会社に来てくれるだけでいい」
と言ってくださったので、その言葉に甘えて働かせていただいている、というわけなのです。
働くのは、生きている者の務め、使命ですから、働く場所があるなんて、ありがたいですね。
ご本人の言葉は、いつもゆっくりとしていて、なんだか幼い頃のおじいちゃんおばあちゃんのうちに遊びに来たときのようです。
最後に
どうしても、現在バリバリと働いている方が語る仕事論みたいなものは、こうあるべき!という良くも悪くも押し付けがましくなりがちです。しかし、福井福太郎さんが語る仕事論や日本についてのお話しはどこまでもゆっくりとしていて真の強さを感じる言葉です。
様々な時代を経験し、今なお同じ時代に生きている仲間にたいして暖かくも厳しく叱ってもらえる存在。
そんな存在が会社でも実生活でも少なくなりましてね。
以上です。
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