【書評】イノベーション・オブ・ライフ

2013年5月17日金曜日

書評

t f B! P L


はじめに


最初に言っておかなければいけないのは、本書は難しいと言う事です。

難しい。けれど、読む価値はある本。
きっと読んでくれないけど、奥さんにも読んでもらいたい本。

と言う感じの本です。

訳者のあとがきによれば

クレイトン・クリステンセン教授は、毎年ハーバード・ビジネススクールで受けもつ講義の最終日に、ビジネスや戦略ではなく、どうすれば幸せで充実した人生を送れるかについて、学生たちと話し合う機会をもっている。2010年には学生たちのたっての希望で、その年の卒業生全員に向けて授業を行った。
この内容を、二人の若々しい共著者とともに加筆書籍化したものが、本書一イノベーション・オブ・ライフである。

との事。

最近流行っている?アメリカの大学の講座を本にしたやつ、ですね。

本書の構成は、勝手にこんな感じかと。

20130516210855.jpg
ざっくりとすると、
  • キャリアについて
  • 関係性について
  • 誠実な人生について
の3つの構成で書かれています。

何が難しいのか?


上で書いた構成を理解するのが非常に難しいのです。

ひとつひとつは、とてもためになる内容なのですが、アメリカの大学の講座を本にしたやつにありがちな、全体として何を訴えたいのか、がすぐにはわからない。

何に向かって走っているのかわからない状態ではじめて会った人とドライブしているような気持ち悪さはあるものの、乗っていたら意外と楽しいかもな、と言う感じ。


何故奥さんに読ませたいのか?


明らかに、ビジネス書だと思って読んでいたのですが、『関係性について』あたりからは、ビジネスの理論を使って家族や子どもと、どのように関係性を作っていくべきかを中心に語られます。

この部分が非常に良いのです。

例えば、

未来をアウトソーシングしてはいけない

中略

あなたは子どものためだと思って、資源を与える。実際、子どもに必要ものを与えることが、親として当然の務めと思っている人がほとんどだ。
子どもがいくつの活動に関わり、いくつの楽器を習い、いくつのスポーツをしているかを、隣人や友人と競い合う人もいる。
これは比較しやすいし、そうすることで自分はいい親だと満足できる。
だがこの愛情あふれる行動も、やりすぎるとかえって、子どもがあなたの望むような大人になるのを妨げてしまう。
子どもに必要なのは、新しいスキルを学ぶことだけではない。 能力の理論は、子どもに困難な挑戦を与えることの必要性を教えてくれる。
子どもに厳しい問題を解決させ、価値観を養わせよう。どれほど多くの経験をさせても、心から打ちこめるような機会を与えない限り、将来の成功に必要なプロセスを身につけさせることはできない。
また子こどたちにこうした経験をさせる役割を他人任せにする、つまりアウトソーシングすれば、あなたの尊敬、賞賛するような大人に育てあげる、貴重な機会を失うことになる。
子どもが学ぶのはあなたが教える準備ができたときではない。彼らは、学ぶ準備ができたときに学ぶのだ。 子どもが人生の困難に立ち向かうそのとき、あなたがそばにいてやらなければ、彼らの優先事項を、そして人生を方向づける、貴重な機会を逃すことになる。

中略

子どもがぶつかる困難には、重要な意味がある。
子どもは大変な経験をすることでこそ、生涯をとおして成功するのに必要な能力を磨き、養っていく。
気難しい先生とうまくつき合う、スポーツでの失敗を乗り越える、学校内のグループの複雑な人間関係を生き抜く方法を学ぶといったすべてが、経験の学校の「講座」になる。
仕事で失敗する人は、もともと成功する能力が欠けているのではなく、仕事に伴う困難に立ち向かうカを身につけるような経験をしてこなかったのだ。言いかえれば、間違った「講座」を受講してきたということになる。
世の親は、よい学業成績やスポーツの実績など、子どもの経歴を積みあげることにこだわる傾向がある。
だが子どもが生きていくのに必要なカを養う講座をおろそかにするのは間違っている。
子どもにどんなカが必要になるかを考え、そこから逆算しよう。
将来の成功に必要なスキルを養う助けになる、適切な経験を探し出そう。
それはあなたが子どもに与えられる、最高の贈り物の一つなのだ。


長い けれど、言っている事はわかる。

とても示唆に富んだ言葉が次々に出てきます。
僕がとくに心に留めた言葉を勝手に太字にしてみました。

同じような、事を『キャリアについて』の中でも書いています。


彼らを動機づけていたのは、自分たちの家を手に入れたいという願いではなかった。
家を建てたという行為と、自分がそれに貢献しているという自覚が、満足感を与えたのだ。
それまでわたしは、大事なのは終着点だと思っていた。
だが実は、そこに向かう道のりにこそ意味があったのだ。



ビジネスにおいても、人生においても、子育てにおいても、人が人として進むべき進み方に違いはない、と言う事なのでしょう。

ゴールにこだわり過ぎて、プロセスをないがしろにすると、結局、何のためにゴールに到達したのかわからなくなる。

イノベーションとは?


先日、朝ジョギングしている時に聴いているラジオでこんな事を言っていました。

イノベーションを日本語では、技術革新と訳される。

しかし、英語では、技術を革新するだけでなく、それを普及させるプロセスの部分まで含める。

日本では、普及させるプロセスまで含めてイノベーションだと認識している人が少ない。


先日紹介した英語辞書でイノベーションを引いてみました。

the process of adopting a new thing, idea, or behavior pattern into a culture.


ラジオでは、新しい技術を開発して終わりが日本のパターンになってしまっていた。

とも言っていました。

iPhoneなどは、まさに技術は日本でもずっと前に開発されていたのに、それを普及させるところのイノベーションがなかったために日本からは出せなかった良い例ではないでしょうか。


最後に


最近、評判の良いビジネス書を片っ端から読んでいて思うのは、ビジネスも結局、家庭の延長なんだな、と言う事です。

イノベーションは、仕事だけでなく、家庭でも大切。

昔のように、家庭の事は奥さんに任せて外で働いているだけのような旦那さんは少ないようですが、今一度きちんと奥さんと子どもと向き合えているか考えるのに良い本です。

奥さんが子どもとのやりとりでテンパっている時に何か出来るように慣れるといいのですけど。

以上です。


補足:本文からの引用はこちらで紹介したアプリで行なっています。


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