取材を言いつけられた病院は、異様な雰囲気に包まれていた。
新種のウィルスが入院患者の間で感染したと言う。
取材中に感染してしまった京介。
10日間生死の境を彷徨い目覚めた彼に起こった出来事とは。
井上夢人、9年ぶり待望超大作という帯につられ読んでしまいました。
534Pもある大作なのに、仕事がありながら1日で読んでしまいました。
ストーリー
フリーライターの仲屋京介は、山梨に出向くことになった。事情を良く知らず、竜王大学医学部付属病院に着いた京介は異常な光景を目にする。
バイオハザードと書かれたマークで病院の周りが封鎖され、報道陣が周りを取り巻きガードマンが侵入を阻止している。
院内感染が起き、この一時間だけで五人もの死者が出ているという。
院内だけでも450人が閉じ込められている。まだまだ死者が増えそうだ。
新種のウィルスというのがどのようなものなのか全くわからない。
それを探るために編集部に派遣されたらしい。
仕方なく市役所の相談窓口に情報を求めてやってきた京介は、落合めぐみと出会う。
彼女は、病院内にいる恋人、木幡耕三の様子を聞きに来ていた。
彼女から話しを聞こうとした京介は、喫茶店で彼女と対面する。彼女は、つい昨日病院内で恋人とともにある人物、興津を訪ねていてそこで恋人と喧嘩をし、病院を出た事を京介に話す。
可愛らしい顔だがニキビがある事にきづく。指摘すると、彼女は驚いた顔でニキビのあたりを触る。『なに、これ』
彼女は、新種のウィルスに感染していた。そして京介もまた感染し、病院へ搬送された。
病院についた京介は、検査を受けた翌日激しい頭痛と発熱、意識の混濁が始まり、10日間意識不明になる。
新種のウィルスは、竜王大学にちなんでドラゴンウィルスと名付けられた。
ドラゴンウィルスにかかり、生きていたのは、京介、めぐみ、興津、木幡の四人で、木幡は意識不明だった。
京介、めぐみ、興津は隔離され様々な検査が行われるがそれぞれに奇妙な『後遺症』が現れ始める。
井上夢人さん
井上夢人さんと言えば、岡嶋二人というペンネームで、徳山諄一さんとともに小説を共作するという日本では珍しいケースで執筆されていました。徳山諄一とコンビを組み、「岡嶋二人」のペンネームで、1982年に『焦茶色のパステル』で第28回江戸川乱歩賞を受賞しデビューする。その後、二人で創作活動を続けるものの、1989年刊行の『クラインの壺』を境にコンビは解消され、井上は現在のペンネームである「井上夢人」で創作活動を続けている。
(via 井上夢人 - Wikipedia)
コンピュータにも詳しくらしく、コンピュータを題材にした作品も多いです。
また、『メドゥサ、鏡をごらん』では、何とも言えない後味を残すサスペンスホラーを書いています。
やるせないホラーで読んだ後しばらくはそのイメージに囚われてしまいます。
難しい言葉は極力使わず優しい文体なのですが、かなり作り込まれています。
あえて読者が、あれ?と思う箇所を作り意識をそちらに向けておいて最終的にはそれもあるんだけど別な角度から、の展開。
最後に
本当に面白い小説は、ドラマ以上に次が気になって思わず空き時間を見つけては読んでしまいます。本作も長編ながら、次が気になって気になって。
気がつけば子供も奥さんも寝静まった部屋でひとり黙々と読んでしまいました。
SF的な要素も強いですが、女性の方でも楽しく読めるのではないでしょうか。
以上です。