3月13日13時から13秒間、誰も死なせてはならない。
ある日JAXAから総理官邸に届けられた情報は衝撃的ではあるものの、よくわからない内容だった。
あるでテープがカットされるように、3月13日13時14秒になった瞬間、それまでの13秒間がすっぽりとなくなってしまうと言うのだ。
東野 圭吾さんと言えば、探偵ガリレオの湯川教授シリーズや、新参者の加賀恭一郎シリーズなどの印象が大きいですが、このようなSFもあるのですね。
ストーリー
ある日JAXAから総理官邸に届けられた情報は衝撃的ではあるものの、よくわからない内容だった。ブラックホールの影響で、3月13日13時から13秒間「何かが起きる」。その「何か」は専門家たちにも具体的にはわからない。でも、その13秒間が時間の歪みによってすっぽりと消え去ってしまうと言うのだ。
所轄の刑事である久我冬樹は、上司である
警視庁の兄、誠哉の指示を無視して宝石強盗犯のアジトに張り込んでいた。
兄、誠哉は弟を離れさせようとするがその時犯行グループに撃たれてしまう。
その姿を目撃した弟冬樹だが逃げようとする犯行の車に執拗に食らいつく。
次の瞬間、車が次々に事故を起こし始める。冬樹は、車の中を覗くが運転手がいない。
運転手だけでなく、街に人がいなくなってしまっている。車やバイクは次々に事故を起こし、店からは火があがる。
冬樹は、何が起こったのか確かめるため東京タワーへ自転車を走らせる。
東京タワーから街を見下ろして冬樹は驚愕する。
東京全てで煙が上がっていたのだ。
そんな中、望遠鏡で街を見ていた冬樹の目に人が動く姿が映る。その場所へ急ぐ冬樹。
探し回る冬樹を笛の音が聞こえる。
笛の音を突き止めた冬樹は、小さな女の子がいることを発見する。異常な状況の中やっと人に会えた冬樹は安堵するが女の子は言葉が話せないようだった。
女の子に連れられて上がった屋上には女の子の母親が倒れていた。
母親は意識を失っているがやがて意識を回復する。しかし、女の子は一向に母親に懐かない。不思議な親娘ではあるがなんとか話せる相手を見つけた冬樹は、火の手が上がり続ける街から早く安全なところに避難しようと提案する。
歩いていると、矢印が書いてあることに気づく。矢印の先は銀座の寿司屋でひとりで寿司を食べている太一に出会う。
今後のことを話し会っていた四人の元にラジオから人の声が聞こえてくる。
「東京駅に集まれ」
東京駅に向かう冬樹。そこには何故か死んだはずの兄、誠哉がいた。
「生きる」とは?
本作はSFではありますが、いわゆる謎解きがメインな小説ではありません。きちんと謎解きは用意されますが、おそらくこのような小説が好きな方ならばある程度謎解きに関しては早い段階で察しがつくかと思います。
それよりも、「生きる」とは何か?をとても面白い切り口で切っていきます。
極限状態において、倫理観、善悪、衣食住、病気、他者がいること、物質として人間を定義するもの。時間と人間の関係。
電気ガス水道が止まる。それだけで生活は原始時代のようになる。その上、病院に医者がいない消防士はいない政府もいない。
病気になればそれは限りなく死に近いことになる。例えインフルエンザと言えども適切は処置が行えなければ死に直結する。
その上、安全に数日間も過ごせる場所はない。
食料も底をつく。
人が消えるとは、つまり、その人が生きていた空間と時間も一緒に消えることを示す。その人が生きていた事を示す時間と空間とか一体どこまでの事を言うのか?
衣服はその人を示すのか?その人が掴んでいたものは?時間が消えた場合その人のいったい何が消えるのか?
そんな風に人を定義することを考えたこともなかったのでとても新鮮でした。
最後に
単行本で読むと、474ページもあり比較的厚い本なのですが、ストーリーに引き込まれるとあっと言う間に読めます。一日で読んでしまいました。
登場人物が多くて、名前を覚えるのに一苦労ですが、面倒であれば刑事の弟、冬樹と兄の誠哉だけ覚えればなんとか話しはわかります。
エンターテイメントとしても、生きるってなんなのかな?と考えるにもオススメの小説です。
以上です。